日本政府は人民元建て債券(中国国債)を購入(3)

安住淳財務相には一刻も早く辞任してもらいたい。

政府は、中国が発行する人民元建て債券(中国国債)を購入することを決めた。外国為替資金特別会計(外為特会)を通じて段階的に購入し、最大100億ドル(約7800億円)相当を投資するもので、外為特会の運用多様化に資するのだという。

 安住淳財務相は「(日中の)経済的な関係を強めていかなければならない。(国債購入は)お互いにとってメリットが大きい」「人民元の保有による関係強化は外交上も必要」と述べている。

 はっきりいえば、これは野田佳彦首相訪中のお土産だ。経済的な観点から言えば問題は大きい。

 そもそも外為特会が大きすぎる。同特会はおおざっぱに言えば100兆円の借金をして100兆円の外債投資つまり財テクをしている。その目的は「為替変動を安定化させるため」というのだが、変動相場制を採用している先進国で日本ほど大規模な介入資金を持っている国はない。

 為替相場は二国間の通貨比率であるが、ほとんど二国間の通貨量の比率で決まる。通貨量の伸びを同じようにしていれば為替レートは安定する。これは二国間の物価上昇率が同じなら為替が安定するという購買力平価理論と整合的だ。

 つまりインフレ率を他の先進国並みに2%程度にしておけば為替は安定するので、わざわざ借金してまで外為特会を持っている必要はない。しかも、日本では先進国中ただ一国デフレにしているので円高になって、外為特会で30兆円以上の含み損になっている。早く外為特会を手じまいしたほうがいい。そうすれば国の借金は100兆円も減る。

 中国国債については、取引規制を中国政府が行っており、自由な取引市場はない。わざわざ中国にお伺いを立ててから中国国債に投資するというのでは本来の意味での運用でない。取引市場がないので流動性がなくなる点もリスク管理上は問題である。売却しようにも中国政府にお伺いを立てなくてはできないのでは何のための運用多様化なのか。

 債券運用は売買について自由な市場が前提の話だ。中国に対して国債市場の自由化を訴えていく気が政府にあるのだろうか。特会の運用先多様化にならない中国国債に国民からのカネを投下するくらいなら、その分、外為特会の借金を減らすべきだ。

 財務省は、こうした外為特会の借金も含めて国の借金が大きすぎるので、財政再建が必要とし、そのためには増税だと主張している。

 野田訪中のお土産でしかなく、何のメリットもなくむしろ流動性がなくリスクが大きい中国国債を買うことで借金が増え、それさえも増税のための道具にされるのでは国民はたまらない。(元内閣参事官・嘉悦大教授、高橋洋一
引用元: http://www.zakzak.co.jp/society/politics/news/20111229/plt1112290808000-n1.htm