クローズアップ現代 国谷裕子氏

天安門事件がなかった」と言った人。

以下は「メディア・パトロール・ジャパン」からの転載です。
http://mp-j.jp/modules/d3blog/details.php?bid=139&cid=20#latterhalf139

                                                                                                                  • -

MPJコラム - 『クローズアップ現代』が証明したNHKの正体


文/西村幸祐(作家・評論家・ジャーナリスト)


6月1日にNHKは恐ろしい暴挙を行った。しかし、それに気づく人は多くない。もともとあの番組の国谷裕子氏の怪しさを知っている人であれば、初めから警戒心を以て臨むので「ああ、やっぱり、そう来たか」と自らの鑑賞術を確かめた後で怒りもこみ上げて来ようが、ごく一般の視聴者は「ああ、なるほど、なるほど」と妙に納得してしまうだけだろう。

結論から先に書く。何が恐ろしいかと言えば、わが国の国営放送とも言ってもいい公共放送のNHKが中国共産党の宣伝機関であるCCTV(中央電視台)と全く同じ働きをしたからである。これは比喩でも何でもない。決して誇張ではない。だから、本当に恐ろしい暴挙なのである。

シナ人は人民日報と中央電視台の報道を信用していないのが一般的だ。畏友石平氏によれば、シナ人は人民日報を裏読みするそうである。たとえば政治局の高級官僚の記事から人事や権力闘争がどう行われているかを推測する。それは知識人でも庶民でも同じそうだ。そういう意味では日本人より彼らの方がメディアリテラシーに長けていると言ってもいいだろう。

6月1日の『クローズアップ現代』は来日中の温家宝首相の独占インタビューが放送された。2年前の四川大地震のときに、中国共産党幹部の中で被災地を真っ先に訪れて被災者を懸命に励ます温家宝首相の姿がよくテレビで報道された。それは、シナでは胡錦濤主席と温家宝首相の役割分担がはっきりしているので、大災害が起きたときに政府の代表者である首相が前面で人民と接触し、励ます役割を与えられているからに他ならない。文化大革命当時にも旧満州で大地震が起きたが、その時も現地に飛んだのは周恩来首相であり、毛沢東は一歩も、微動だにしなかったのである。

四川大地震の際は、のちに胡錦濤主席も被災地最前線に赴き被災者を激励したが、当時に比べて情報化社会が進展したのでやむなく執った行動だと思っていい。基本的に人民と接触するのは政府の温家宝首相であり、共産党胡錦濤主席は後ろで目を光らせているのである。面白いことに、これはそのまま6月2日に辞任が発表されたわが国の小沢・鳩山政権の構造と類似している。党中央の小沢一郎の下に、首相の鳩山由紀夫が配置されているという構造である。

6月1日の『クローズアップ現代』で重要なことは、NHKが主体的、能動的に温家宝首相のインタビューを仕掛けたのではなく、中国共産党の意向によって国谷裕子氏が選ばれたということなのである。今年の2月4日に北京で「新21世紀日中友好協会」の第一回総会が開催された。従来の日中友好協会を発展させたもので、日中両国の有識者が構成する民間団体とされるが、この日の議題は両国の国民感情に関して話し合われ、次のような議論が交わされていた。

「両国国民にとって、日中関係に関する情報源はメディアである。国民感情が論より情で動くのは危険だ」

つまり、ここ4、5年断続的にシナから日本に対して向けられる、日本メディアの「反中的な報道を排し、親中的な報道をいかに増やすか」という課題に具体的に応えた大会になっていることに注目したい。

そして実際、6月1日の『クローズアップ現代』で温家宝首相は、このようにメディアに情報操作をするように働きかけた。

「メディアが両国民、今後は特に『青年が互いに信頼していない』という『国民調査』の数字を公開しないことを望む。両国民の感情の交流に力を入れる必要がある」

さり気なくこんな言葉が挿入されたことが恐ろしいのである。

今から5年前の平成17年(2005)9月2日から4日まで、「中国人民抗日戦争・世界反ファシズム戦争勝利60周年記念学術シンポジウム」が北京で開催された。そこで中国共産党序列5位で、共産党中央宣伝部担当常務委員の李長春が以下のような演説を行った。

「中国の抗日戦争は中国人民が民族の危機を救い、民族の独立と解放を目指し、日本帝国主義と死をかけて戦ったものだ。現在、この歴史に対する研究を一層強化することは、歴史的経験を総括し、歴史の教訓をくみ取り、未来を一層切り開くのに役立ち、歴史的事実を把握し、あいまいな認識をはっきりさせ、国際正義と世界平和を守るのに役立ち、資料を幅広く掘り起こし、史実を豊富にし、中国革命史、中国共産党史、人民軍隊史の研究を進めるのに役立つ」

さらに、台湾にまで言及していたのだ。

「日本が中国とアジア太平洋各国を侵略した歴史を深く研究し、日本軍国主義の残虐行為を明らかにし、右翼勢力の歴史をねじ曲げ、侵略を美化するでたらめな論調を暴かなければならない。日本による植民地支配に抵抗した台湾人民の戦いの歴史を深く研究し、『台湾独立』と日本軍国主義の歴史的根源を明らかにし、祖国平和統一を促進しなければならない」

昨年、捏造偏向報道で抗議の荒らしが巻き起こり、現在1万人を超す原告による国際集団提訴が公判に入った『NHKスペシャル シリーズJAPANデビュー』の原型がこの5年前の李長春常務委員の演説であることがよく分かる。

長春は平成19年(2007)4月27日には訪中した自民党の山崎拓前副総裁、加藤紘一元幹事長らと北京で会談し、シナの軍事費急増の理由について「台湾解放のための装備近代化だ」と述べている。その後、大江健三郎氏と会見し、南京記念館に招待し、昨年3月には来日し、日本メディア14社の代表と懇談し、「両国国民の相互理解に向けて良好な世論を作るよう努力してほしい」と要請している。

しかも、じつはこのときに、李長春常務委員は小沢一郎氏とも面会している。小沢氏は政治資金規正法違反事件で公設秘書が起訴されたことについて「不当な捜査だ」と検察を批判し、「私の主張はだんだん理解されてきている」と李長春に自信を見せたという。会談には、鳩山幹事長山岡賢次国会対策委員長中国共産党の王家瑞・対外連絡部長らが同席した。この会見を読売新聞が以下のように伝えている。

《出席者によれば、王氏が「いま、政治とカネが問題になっているが、民主党は本当に政権交代を実現できるのか」と質問。小沢氏が気色ばみ、李氏が「古い友人だから、そういうことも聞いただけだ」と取りなす場面もあったという》

恐ろしいのは、このような過程で日本の政界が動き、民主党政権を想定した中で『JAPANデビュー』が制作され、今回のクローズアップ現代の放送になったということである。今回、温家宝首相は日本の公共放送NHKを使って、6月1日にCCTVや人民日報でいつも行っているプロパガンダを以下のように行った。

「メディアが両国民、今後は特に『青年が互いに信頼していない』という『国民調査』の数字を公開しないことを望む。両国民の感情の交流に力を入れる必要がある」
「中国の軍事力の発展には透明性がある」
「中国は近代史において多くの列強に侵略された。私達は平和と独立が容易ではないことをよくわかっている。中国は他の国の領土を占領したことはない」
「そして私たちが軍事力を発展させる唯一の目的は自衛のためだ」
「中国はこれからも平和的発展を堅持して行く。いかなる国に対しても、永遠に脅威になることはない」
「中国が他国を支配し、覇権を取ることは永遠にないのだ」

まさに言いたい放題であった。そしてそこには、前提として大国になったシナは国際的責任を負っているという政治宣伝が絶妙に配置されていた。NHKの正体がこれほど分かりやすく透視されたことに改めて戦慄を覚える。