嗚呼、鳩山政権かくも耐え難き存在の軽さ!

宮崎正弘の国際ニュース・早読み」平成22年(2010年)3月23日(火曜日)
        通巻2915号 
より引用
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 普天間基地問題は米軍の居直りでお終い
  懸念すべきは新党乱立で民主党が漁夫の利、小沢の高笑い再び?
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普天間基地移転はすでに橋本政権のときに決着をみている。

外交の基本問題は継続性であり、相手といったん約束したことを政権が
変わったからといって覆すのはベトナムとか、アフガニスタンの前近代
の政治となんら変わりはなく、国際政治の信用を得られない。

米国はすでに鳩山政権を見限っており、どう騒ごうが、せせら笑ってい
るだけ。普天間基地で居直りを決めれば、それで済むことである。

奇妙なことに中国もこの問題では東京の動きを欣快とはせずワシントン
の反応をみている。

昨今の米国の対応はと言えば鳩山ブレーン寺島某の根回しのための訪米
では誰も会見に応ぜず、オバマ大統領はコペンハーゲンでも鳩山首相と
の会見を拒否、キャンベル次官補の訪日キャンセル、極めつきの冷たさ。
次の日米首脳会談も流れる見通し。

鳩山政権がなした失敗の数々は取り返しがつかないほどに日本の対外信
用を失墜させ、これからの日本の存在そのものを危殆に瀕せさせた。

かくも耐え難き存在の軽さ!

第一に敵と味方を見誤った。同盟国=米国と敵対し、教科書、歴史認識
などで本来の敵である中国の軍門に下り、アジア諸国を日本から離反さ
せた。

これは外交史上に残る愚挙である。
 
第二に日本の伝統を踏みにじり、天皇伝統に背を向けて、外国へ祖国の
権益を売り渡した。外国人参政権問題ばかりではない。いわゆる「子供
手当」は外国人のたとえば研修生で子供が外国にいても適用される。

一方で日本人の失業者には対策らしきものがない。大学新卒の雇用機会
は失われ、企業は倒産寸前、トヨタは世界に孤立しているのに自国のこ
とより外国のために汗を流し、自国民の失業対策に動く気配さえない。

第三は閣内に「外国の代理人」のごとき人々を引き入れ、国家解体プロ
グラムの工程表でもあるかのように日本の古き良き伝統をひとつひとつ
破壊し続けている。

かろうじて国民新党亀井大臣の存在が破滅から一歩、政権の毀損を回避
させている。


 ▲「国連中心主義」は悪魔の陰謀の隠れ蓑

男女共同参画の延長線上から発想されたのが、フェミニズムの暴走。つ
まり夫婦別姓である。

子供の人権から発想されたうえに選挙対策のばらまきが重なったのが、
子供手当。友愛と国連の平和が重なって出てきたのが東アジア共同体。

いずれも仮面であり、裏面に潜む日本解体の謀略はものの見事に隠され
ている。

これらは「国連中心主義」という戦後日本の主体性の欠如を欺瞞的にお
ぎなってきた他律に政治が逃げているからで、自国の救済という政治本
来の目的を見失うと、こういう子供じみた発想しか浮かばない。
国連は幻想にすぎない。

それにしても鳩山首相は「耐え難い存在の軽さ」と証明する、劣化日本
を代弁する存在である。彼はスタンフォード大学で確率理論を専攻した
ことは知られるが、論文はモロトフ理論を敷衍したものである。

当該理論の概要はと言えば「過去の出来事に囚われず直近の出来事だけ
でものごとを決定し、近未来を予測する」ところになる。

あろうことか、これを政治決定にも応用し、鳩山首相はそれで次の方針
を決めるのだ。

つまり過去50年の安保体制は考慮の対象からはずし、直近の政権交代、
マスコミの報道、世論の変化、沖縄の感情と党内事情を判断材料として、
普天間基地の見直しを決める。情勢の変化でころころと方針が変わるが、
長期的ヴィジョンはない。

これは天気予報の判断材料として十二分に応用されている。天気予報が
12時間以内のことはほぼ正確に当てるが、72時間となるとこころもとな
く長期予報は殆どがはずれる。というより1週間以上の予報は出せない。

鳩山は政治家になるべきではなかった。天気予報士になっていれば、お
そらく日本一だったろう。小沢は不動産、それも投機的不動産業がもっ
ともふさわしかっただろう。

政治を志してはならない指導者に日本は舵取りを任せている。国が滅び
に向かうのも宜なるかな。


 ▲保守新党に国民の期待が集まるのは当然だろうが。。。

鳩山邦夫のフライング=新党結成構想はご愛敬にしても、保守の本命=
平沼新党がモタモタしている間に中田宏、山田宏らの新党「志民会議」
が参議院選挙直前の新党結成が本格化した。

くわえて渡邊ジュニアの「みんなの党」が10議席獲得を射程に動く。

ほかにも与謝野、桝添らが新党結成の動きを見せており、国民の多数は
保守新党への期待を漠然と抱いている。

けれども現時点で見る限り近未来は却って暗い。

なぜなら保守新党の乱立は反小沢票を明瞭に分散させるため、選挙区の
仕組みから分析すれば民主党が漁夫の利を得るチャンスが大きくなる。
ふたたびの小沢の高笑いが聞こえるようだ。

あまつさえ読売新聞のナベツネあたりが盛んに永田町の舞台裏で画策す
るのは新保守合同。この鵺的で隠微な流れは危険である。なぜならナベ
ツネは共産主義をまだ捨てていないからである。

数をたのみに民主党を野党においこむお膳立てとする向きもあるが、出
てくるのはたとい小沢民主を少数派に追い込んでも、民主党にたぐいす
るリベラルのお化けでしかあるまい。

自民党の復活はシナリオとしても、問題外だろう。

スポーツ選手、芸能人、美人すぎる市議なんぞ。真面目な候補者を選定
する能力が希薄であり、そもそも谷垣総裁は党を主導する能力に欠ける。
桝添ら左翼勢力を党内で暴れさせるだけで、数人の落伍者さえ思いとど
まらせる組織力、求心力を無くしたようだ。

 

 ▲救国統一戦線の提唱

組織というものは裏切りを許さない筈であり、三島由紀夫がいみじくも
言い残していったように党に不満があれば切腹するのが武士の作法。民
主へ走った議員を報復する力もない組織は、自壊せざるを得ないのでは
ないか。

だが、自民党を日本国家・民族の理想を糾合する共同体の代弁者と考え
ること自体が間違なのである。

とうの昔からタレント議員をそえて数あわせだけを目標として、基本の
綱領だった改憲を言わなくなり、いや国家国民を語る政治家は稀となり、
大事なことを先送りし、業界団体に票割りを繰り返して多数派だけが目
標としてきたわけだから自民党は利益共同体に成り下がっていたのだ。

とうに理想やイデオロギーや政治理念を投げ捨てて、目先の利益誘導の
ためには党中枢を極左に明け渡し、宗教セクトとも野合してきた。

すると次の参議院選挙で考えるべきことは「救国統一戦線」である。

少数選挙区では自民党を含めての保守合同で民主党を完敗へと導かなけ
ればならず、比例区でそれぞれが保守新党としての候補を立てるという
ような喫緊の対策が選挙戦術上に必要だろう。
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