小沢民主党幹事長:不起訴処分


マスコミや民主党議員・支持者、人権主義者(例「大谷昭宏」)、小澤本人から「政治資金規正法」違反は単なる「形式犯」で単なる記載を怠っていただけで大したことはないということがしきりに言われている。とんでもない誤解である。
 法律知識のない人にとっては「形式犯」とは見慣れない名前だろう。これは例えば「住居侵入罪」(刑法第130条)のように、犯罪の構成要件が一定の行為(この場合は他人の住居に侵入する)があれば足り、保護法益(この場合は財物を奪われるなど)に対する侵害または危険性を必要としない犯罪をいう。わかりやすく言えば、住居に侵入されたとしても<直ちに>物を奪われたり、命の危険にさらされるわけではない。留守中に侵入されたことを考えれば理解できよう。これに対しては「住居侵入罪」の保護法益は「住居の平穏」であるから、保護法益に対する侵害があるという考えもあろう。しかし、それがあるとしても、軽微なものとも言え、住居に侵入されてもそれが犯されるのかについてはそう明確なものではない。前述のように留守中に侵入されたことを考えればわかると思う。言い換えれば、重大な結果が発生しない犯罪であるとも言える。別の言い方をすれば、「住居侵入罪」に限って言えば、他の重大な犯罪の前段階の犯罪である面を有している。
 「政治資金規正法」違反でも、単に他人からの寄付などを記載しないというだけで、別に重大な保護法益を犯すという結果がもたらされるというものではないとも考えられよう。しかし、「政治資金規正法」がどうして制定されたかを考えると、こうした考えが誤っていることがよくわかる。これは同法の第1条(目的)にあるように、政治団体および公職の候補者の政治活動、とりわけ「金の問題」が国民から批判を浴びてきたことから、その不断の監視と批判を受けさせることとするとともに、政党には国家から交付金(「政党交付金法」)が与えられることから、なお一層「金の問題」を<公明正大>にするために、同法が制定されたのである。したがって、同法の保護法益は「国民の政治団体・政治家に対する信頼」であると言えよう。こう考えれば立派なかつ重大な保護法益が存在するのであって、単なる「不記載」を罰するものでないことが明らかであろう。
 このように「保護法益」は重大なものであって、前述の「住居侵入罪」と異なることが理解される。「政治資金規正法」違反、「形式犯」を超えた「実質犯」(保護法益に対する侵害または危険性を必要とされる犯罪)であるとも言い得る。決して軽微でない犯罪なのである。これは法律専門家にとっては常識であって、さればこそ、東京地方検察庁も<重大犯罪>との認識の下で「政治家に対する信頼を損なう犯罪」として、これまた<重大な決意>をもって捜査に当たっているのである。


【引用元】 ,
"http://www.asahi-net.or.jp/~xx8f-ishr/ozawa.htm"