“謎”のIPアドレス「0.0.0.0」の正体とは?

 IPアドレスの「0.0.0.0」は、ルーティング(経路制御)不能IPv4インターネットプロトコルバージョン4)アドレスだ。宛先アドレスがない場合に使用できる経路の「デフォルトルート」を表したり、LANにおいてコンピュータやプリンタなどのデバイスにデータを一斉配信するための「ブロードキャストアドレス」になったりと、0.0.0.0にはさまざまな用途がある。

IPアドレス「0.0.0.0」の正体 何を意味するのか

 インターネット関連技術の標準化団体「IETF」(Internet Engineering Task Force)は0.0.0.0を、「このホスト、このネットワーク」を指定するための専用アドレスだと定義している。ちなみにIPv4アドレスは、0.0.0.0から255.255.255.255まで存在する。IPv6インターネットプロトコルバージョン6)で0.0.0.0に相当するアドレスは「::/0」だ。

 簡単に言えば、0.0.0.0は「このネットワーク」を意味するが、通常のIPアドレスとは異なる。「ここにアドレスを挿入」を意味したり、文脈によっては「特定の宛先アドレスがない」を意味したりする。

 0.0.0.0はルーティング可能で有効なIPアドレスが割り当てられるまでの“代役”を果たすこともある。ルーティングとは、宛先アドレスの情報を元にデータの最適な送信経路を割り出すことを指す。

 エラーの結果として0.0.0.0が現れる場合もある。例えばデバイスIPアドレスとして0.0.0.0が割り当てられている場合、そのデバイスは「ネットワークに接続不可」「通信ができない」ことを意味する。他にも0.0.0.0はルーティングにおいて、宛先アドレスへの経路が見つからないときのデフォルトルートとして意図的に使われる場合もある。


引用元:“謎”のIPアドレス「0.0.0.0」の正体とは?:IPアドレス「0.0.0.0」とは何か【前編】 - TechTargetジャパン ネットワーク

 前編「“謎”のIPアドレス『0.0.0.0』の正体とは?」は、「0.0.0.0」がどのようなIPアドレスなのかを簡単に整理した。中編となる本稿は、0.0.0.0の具体的な用途を紹介する。

「0.0.0.0」の用途はこれだ

 システム初期化のとき、コンピュータやプリンタなどのデバイスが有効なIPアドレスの割り当て前に、0.0.0.0を利用できる。0.0.0.0は「DHCP」(Dynamic Host Configuration Protocol)のエラーの結果として表示されることもある。DHCPは、新たにネットワークに接続されたデバイスに自動的にIPアドレスを割り当てるプロトコルだ。

 DHCPによってIPアドレスを取得できなかったデバイスに対して、IPアドレスを設定する「APIPA」(Automatic Private IP Addressing)という技術がある。APIPAを実装したデバイスは、DHCPエラーが発生すると、169.254.1.0から169.254.254.255までの範囲のIPアドレスを自身に割り当てる。この場合、デフォルトゲートウェイ(送信相手までの経路が不明な際、データを送信する中継機器のIPアドレス)として0.0.0.0を使用する。

 他にも0.0.0.0には次のような使い方がある。

デフォルトルート

 IPv4インターネットプロトコルバージョン4)のルーティング(経路制御)において、0.0.0.0は「デフォルトルート」を表す。デフォルトルートは、ルーティングテーブル(ルーティング時に参照される経路情報)に、宛先アドレスに該当する経路情報がない場合に使用できる経路だ。

 デフォルトルートが0.0.0.0のサブネットマスクIPアドレスのうち、ネットワークアドレスとホストアドレスを識別する数値)と共に使用されるときは、どの宛先アドレスもデフォルトルートに該当すると見なされる。一方でデフォルトルートが255.255.255.255のサブネットマスクとともに使用されるときは、どの宛先アドレスもデフォルトルートに該当しないと見なされる。

ブロードキャストアドレス

 0.0.0.0はIPv4の「ブロードキャストアドレス」として使用できる。ブロードキャストアドレスとは、LANの全てのデバイスにデータを一斉配信するために使われる特殊なアドレスだ。

ネットワーク非接続の状態表示


 デバイスがIPネットワークに接続していないことを示す際に、0.0.0.0を使う。デバイスはオフラインのとき、自身に0.0.0.0を割り当てる可能性がある。


引用元:いまさら聞けない、“謎”のIPアドレス「0.0.0.0」の用途:IPアドレス「0.0.0.0」とは何か【中編】 - TechTargetジャパン ネットワーク

 ルーティング(経路制御)不能IPv4インターネットプロトコルバージョン4)アドレスで、複数の用途がある「0.0.0.0」。前編「“謎”のIPアドレス『0.0.0.0』の正体とは?」と中編「いまさら聞けない、“謎”のIPアドレス『0.0.0.0』の用途」は0.0.0.0の目的や意味を解説した。後編となる本稿は、混同しやすい0.0.0.0と127.0.0.0の違いにスポットを当てる。

「0.0.0.0」と「127.0.0.0」はここが違う

 IPv4アドレスで0.0.0.0と混同しやすいのは、127.0.0.0だ。どちらも「クラスA」(ネットワークアドレスが8ビット、ホストアドレスが24ビット)に分類される他、ホストアドレスが自身を指すという特殊な目的を持つ。

 0.0.0.0と127.0.0.0の大きな違いは用途にある。前編の通り、0.0.0.0には複数の用途がある。それに対して127.0.0.0の用途は限られており、「ループバック」アドレスとして使われている。ループバックとは、デバイスから送信されたデータをそのデバイスに送信し返す仕組みを指す。

ループバックのトラフィックとは

 127.0.0.0は「閉回路」によく例えられる。127.0.0.0(あるいは127.0.0.0から127.255.255.255までの範囲の任意のIPv4アドレス)に送信されたデータは、同じデバイスに送信し返されるからだ。そのデータは、ローカルネットワークに入ることができない。そのため127.0.0.0は通常、テストやトラブルシューティングのために使われる。「localhost」とも呼ばれる。127.0.0.0/8ブロック(127.0.0.0~127.255.255.255)内のアドレスは、ネットワークに現れない。IPv6インターネットプロトコルバージョン6)では、127.0.0.0は「::1」に相当する。

0.0.0.0のトラブルシューティング

 デバイスがIPネットワークを使用し、自身のIPアドレスを0.0.0.0と表示している場合、有効なIPアドレスを取得するには、どうすればよいのか。

 動的IPアドレスの割り当てが可能なネットワークの場合、デバイスIPアドレスを更新できる。ただし新たにネットワークに接続されたデバイスに自動的にIPアドレスを割り当てるプロトコルDHCP」(Dynamic Host Configuration Protocol)の失敗が、断続的に発生することがある。有効なIPアドレスの取得失敗が続く場合、DHCPサーバの構成をチェックしよう。失敗の一般的な原因は、使用可能なIPアドレスDHCPプールにないことだ。

 静的IPアドレスを必要とするネットワークの場合、有効なIPアドレスをデバイスで生成できる。


引用元:“謎”のIPアドレス「0.0.0.0」と「127.0.0.0」の違いとは?:IPアドレス「0.0.0.0」とは何か【後編】 - TechTargetジャパン ネットワーク