尖閣不法上陸の香港活動家

尖閣不法上陸の香港活動家、あの五人の凶暴な顔つきを見たか
  反政府運動のプロ、転じて「反日」は収入源に問題ありでは?
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 8月15日、ついに野田首相靖国神社に参拝しなかった。中国の見えない政治圧力に屈服したのだ。
それをあざ笑うかのように香港の反日活動家らが、同日夕方、我が国の領土である尖閣諸島に上陸した。「日本は海軍を派遣できず、発砲の懼れがないから、これくらいの暴力的示威行為は大丈夫」
と最初からタカをくくっている。

 香港メディアが扇動的報道に終始するのは対北京への負け犬根性だろうが、中国では人民日報系の『環球時報』の主張が一番過激である。
理由は新華社がいえない政府の公式見解の枠を超えてホンネを表現できるからだ。「尖閣は中国領であり、日本は即時釈放せよ」と主唱している。これでは香港の活動家を同胞扱いしているばかりか、行動を是認する一体感を表明していることと同義である。
 したがって環球時報は、北京外交部の公式見解より、やや過激である。

 つまり胡錦涛らの穏健な外交路線に楯突くため、メディア管制は上海派の李長春が主導しているが、つぎも上海派の劉雲山が宣伝担当の政治局常務委員になりそうで、政権中枢の考え方と幾分乖離していることが分かる。

 北京の日本大使館前、上海の領事館前におしかけた反日デモ隊は、わずか二十名から、十数名。プラカードに「領土収復」の文字があるが、この標語も統一されていることに注意する必要がある。
一昨年の反日デモは「沖縄奪還」ではなく、「琉球回復」だった。
瀋陽、大連、重慶、広州にも日本領事館があるが、抗議活動はまだ報告されていない。
 香港の反日活動家への連帯表明は一部のやらせであることも明瞭だろう。

 こんかいの香港の活動家らは、本来、反政府活動家だった。反共産主義である。それが、運動の衰退とともに、たぶん食いつなぐ方便として、反日に短絡したのだろう。反日で香港人の名状しがたい精神的トロウマも克服できる。
資金も集めやすい。


▼香港人の精神的トロウマは鬱憤を晴らす代替対象が必要

英国時代は植民地根性に振り回され、97年以後は、つねに中国にいじめられ、精神的にも追い込まれており、そのうえ通貨も香港ドルより人民元の方が強くなって、香港の政治家もメディアも、北京の顔色を窺って狡猾に生きていく。
その鬱憤をはらす格好の代替対象は日本である。

 台湾の反日活動家らが、かれら香港のプロとの共闘を土壇場で止めたのは、利用される危険性を感じたから賢明だった。
台北の交流協会前のデモはアリバイ証明である。台湾は親日派が圧倒的だが、蒋介石に恩義を感じる中華思想組があって、とくに「新党」支持者は反日である。極端な少数派である。

 しかし尖閣に上陸した凶暴な犯人等は青天白日旗も掲げていた。中華民族という架空の概念を強調して香港、台湾、大陸の連帯感を表明しようとする作為が透けて見える。

 香港の行政長官は上海派から胡錦涛直系の梁振英に変わったが、この長官は中国共産党秘密党員である事実を思い起こしていただきたい。
香港最大財閥の李嘉誠は、上海派の候補(唐英年)を露骨に支援したため、まもなく胡錦涛共産主義青年団(団派)の復讐に見舞われるだろうが、その前に香港から逃げ出す算段をしていたと香港情報は伝えている。

 このたぐいの財界人が、反日活動家らに資金を提供し、迂回路での政治工作をなして北京中枢に遠回しに物を言っている可能性がもっとも高い。凶暴な顔つきの上陸犯人等は結局、かれらに利用されているだけである。

引用元:「宮崎正弘の国際ニュース・早読み」