日本統治時代 (備忘録)

 草思社から出たばかりの、『日本統治時代を肯定的に理解する』を読んで驚いた。学校が建ち、電気、水道、電話が導入され、急速に現代化する京城(けいじょう)(現ソウル)。よく通った日本人の歯医者さんは、子供にも丁寧(ていねい)に接してくれた。
 ▼1926年に生まれ、20年間日本統治を体験した著者、朴贊雄(パクチャンウン)さんの思い出は、愛惜に満ちている。朴さんによれば、創氏改名は強制ではなく、統治後期には独立の動きもなかった。「朝鮮に政争も腐敗も弾圧もない、このような天下泰平の時代が、かつてあっただろうか」とまでいう。
 ▼「植民地支配によって、国と文化を奪われ、民族の誇りを深く傷付けられました」。日韓併合100年で出た菅談話とは、ほど遠い内容だ。カナダ在住の朴さんは、4年前に亡くなった。日本語で書かれているために、韓国で広く読まれる機会がないのが残念だ。
 ▼韓国では2005年、高麗大学名誉教授の韓昇助(ハンスンジョ)さんが雑誌『正論』で、「日本の植民地支配は不幸中の幸いで、むしろ祝福すべきこと」と論じて、世論の袋だたきに遭い、行方をくらます騒動があった。
 ▼一方、昨年出た『大韓民国の物語』(文芸春秋)のなかで、植民地時代に韓国は近代化し発展した、との見解を示した李榮薫(イヨンフン)ソウル大教授はさほど激しいバッシングにさらされていない。韓国近代化の歴史を、実証を踏まえて見直す動きも出てきたようだ。
 ▼菅談話はそれに水を差し、日本の「悪」をひたすら追及する、日韓の左派グループを勢いづかせてしまった。韓国民が反日に血道をあげ、自らの暴政に関心を示さない状況を、北朝鮮は何より望んでいる。菅談話がどれほど罪深いか、首相は一刻も早く気づいてほしい。

ソース:
MSN産経ニュース