西欧のことわざに曰く「愚民の上に暴政あり」。

9月24日付けに真悟通信453より転載

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象徴的に「鉄」を例に挙げると、鉄一トンを生産するのに、二酸化炭素は容積ではなく重さでどのくらい排出されるか。
 それは、二トンから三トンと教えられている。まさに膨大な量である。
 しかしこの鉄は、現在文明の基本的資材である。鉄がない経済はあり得ない。つまり、二酸化炭素の排出量削減は、鉄生産の削減すなわち「経済の削減」につながる。

 従って、世界各国の代表は、温室ガス排出削減問題に関して、それによって自国の経済が「削減」されてはならないと国益を賭けて国連に集まっている。すなわち、集まっている各国には自国だけが石器時代に戻らされてたまるか、と思っている途上国も多いことだろう。
 その前で、日本の総理が「25パーセントの削減」を表明したのであるから、皆、おーと拍手する。さらに総理は、各国に対して「技術的、資金的な支援を行う用意がある」と言ったものだから、拍手は喝采となった。
 この拍手喝采を我が国の外交への喝采と思ってはならない。
温室ガス排出削減に関しては、日本の不利益は自国の利益であるから各国代表は躊躇なく拍手したのである。さらにただで技術と金がもらえるなら喝采する。

 ガスの25パーセント削減で、企業は確実にコストアップに苦しめられる。存亡の危機にたたされる企業も少なくはなく、海外に脱出を余儀なくされる企業も続出することになる。
 これを承知でさらに各国に技術的資金的援助を実施するということは、この苦しいなかで勤勉な国民が作り出した国民の汗の結晶のような金を惜しげなく各国に差し上げるということである。
 この度鳩山氏が約束した排出ガス25パーセントの削減と技術と金の援助は、確実に国民に重大な負担を強いることなのである。
 世界の代表は、この削減問題には各々の国益がかかっていると判断して集まっていた。その前で、自国の「国益」に全く関心がないかのように無邪気に25パーセント削減と援助を表明する日本の総理を見た。
 各国代表は「異星人」を見る思いだったのではないか。

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