日本における時刻の基準となるのが「日本標準時(JST)」だ。日本標準時は情報通信研究機構(NICT)が決めている。東京都小金井市にあるNICT本部には、JSTを決めるための原子時計が18個存在している。
18個の原子時計を加重平均
精度が高いとされる原子時計だが、温度や湿度、地球の磁場などの影響で周期が微妙に変化してしまう。NICTの原子時計は、シールドを施して温度や湿度を一定に保った部屋に設置しているものの、影響を完全に排除することは不可能だ。そこで、18個のセシウム時計を計測。安定した時計には高得点、安定度が悪い時計には低い点といったように加重平均しながら合成してNICT版の協定世界時(UTC)を決めている。これを9時間進めてJSTとしている。
標準時の決定方法 (写真提供:NICT)
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なお、全世界の標準時の基準となるUTCはフランスの国際度量衡局が決める。このUTCは、NICTの18個を含む世界中の機関が管理している原子時計からデータを集めて算出している。
算出したUTCは、国際度量衡局が月に1度のタイミングで発表している。つまり、本来のUTCはリアルタイムでは存在しない。「過去のUTC」しかわからないのだ。
日本と同じように、各国は原子時計を持ち独自のUTCを算出して国内向けに配信している。それらローカルのUTCと、国際度量衡局が発表したUTCを比較することで世界中の時刻がなるべくずれないように調整する。NICTではUTCとの誤差を10ナノ秒以内に抑えることを目標に加重平均の重み付けを調整している。
国や地域をまたいで時刻を調整する場合には人工衛星を使うのが一般的だ。GPS衛星から送られてくる時刻情報と比較したり、商用の通信衛星を使って時刻情報を双方で送り合ったりする。