トロン―国産OSが世界標準になる

トロン著作権を譲渡

 電気・通信の分野で世界最大の標準規格策定団体である米国電気電子学会(IEEE)が、トロンフォーラム(会長は坂村博士)にトロンの著作権譲渡を求めてきたのは、トロンがデファクト・スタンダードであることを認めたからだ。坂村博士は昨年8月、IEEE標準化委員会のコンスタンチノ・カラカリオス事務局長と会談し、組み込み用トロンの最新版である「マイクロTカーネル2・0」の著作権を譲渡する(両者が著作権を共有する)契約書にサインした。

 「『ミスター坂村、あなたはよく頑張った。これからは私たちがトロンを発展させてあげよう』と言われた。どうしようかと思ったけど、譲っちゃうことにしました。もちろん無償ですよ」。調印の2か月後、坂村博士は、譲渡の理由を尋ねた筆者にそう答えた。

国電気電子学会が認定へ

 IEEEは電気・電子関連の幅広い技術分野で約900件もの標準規格を定めている。その規格が世界標準になっているおかげで、世界中で同じ工業製品を使うことができるのだ。例えば、どこの国を訪れても自分のスマホが無線LAN(WiFi)につながるのは、世界中がIEEEの定めた無線LAN規格を使っているからだ。情報処理系OSとしてパソコン以外では圧倒的なシェアを占めるポジックスも、IEEEが標準規格として認定したOSである。

 「われわれが標準化(標準規格として認定)すれば、トロンはよりグローバルに受け入れられるようになるだろう。トロンの未来は明るい」。標準化作業部会のスティーブン・デュークス議長は、昨年12月に東京・六本木で開かれたシンポジウムでそう語った。

 作業部会での標準化作業が終了し、標準化委員会で認められれば、トロンは晴れてIEEEの標準規格となる。事実上の世界標準から、公式の世界標準となるのだ。早ければ年内に認定される見込みだ。

 世界標準になれば、トロンを多く採用している日本の工業製品には追い風になることだろう。

 組み込み用のトロンは情報処理系OSよりも構造がシンプルなので、例えば発展途上国の技術者であっても、先進国の大手メーカーの協力を仰がなくても、独自に製品開発に利用できる。IEEEは、標準化によって、途上国でもトロンの利用が広がるだろうと予想している。


ソ-ス:トロン―国産OSが世界標準になる : 特集 : 読売新聞(YOMIURI ONLINE)