ユーロ圏債務問題は日本に対し二つの教訓

国際会計基準も止めてほしい。

新宿会計士は現在、本体ブログで「欧州ネタ」に、そしてこちらの出張所では「韓流ネタ」に嵌っている。ただ、再び韓流ネタから離れてしまうが、本日はこちらの出張所で欧州ネタを久しぶりに取り上げてみたい。

当職は債務危機を解決する意思も能力もない欧州に対し、もはや揶揄するくらいしか対応のしようがなくなりつつある。ドイツは典型的な輸出立国であり、しかもユーロ圏に対する輸出高が半額以上を占めているため、共通通貨・ユーロを使っている以上、どれだけ輸出しても為替レートを通じた輸出競争力の調整メカニズムが働かない。従って、ユーロ式ネズミ講が廻っている限りに於いては、ドイツは無限に貿易黒字を積み上げ続け、周辺国は無限に国債を発行し続けるしかないのである。

言ってみれば、周辺国政府がドイツの銀行からユーロ建てで借金をして、公務員に給料を支払い、公務員は貰った給与でドイツ製品を買っているに過ぎないのである。日本で言えば、東京の世帯が地方の親に仕送りをしているようなものだが、日本との違いは、地方交付税交付金が給付であるのに対し、欧州の場合は借金である、という点に尽きる。つまり、いつかはユーロ式ネズミ講が破綻せざるを得ないのである。

本来、景気後退に直面したときには、公共事業を打って景気の振興を行い、併せて発生するインフレや自国通貨安を通じて輸出競争力を改善し、債務の実質価値を減らすことができるのだ。ところが、ユーロ圏ではこの手が使えない。そして、遂に先週の欧州首脳会合では、アンゲラ・メルケル独首相が主張した

無駄遣いはやめなさい!

という周辺国に対する命令が、首脳会合の成果として採択されてしまった。これが「財政規律の義務付け」である。これは成果というよりは明らかなユーロ圏の失敗なのだが、もはやユーロ圏は取り返しのつかないところにまで来てしまったかの感がある。

ユーロ圏が市場の疑念に耳を塞ぎ続けていると、当然、市場はユーロ圏に対して解体を迫るだろう。先週のユーロ圏首脳会合は、ユーロ圏解体のきっかけを作った会合として、後世から「歴史の汚点」とでも言われるのかもしれない。

※ ※ ※ ※ ※ ※ ※

ユーロ圏債務問題は日本に対し二つの教訓をもたらしてくれる。

一つは、「異なる主権国家を統合することの難しさ」だ。欧州のように、一人当たりGDP水準も比較的似通っており、キリスト教という価値観を共有している人たちですら、国家統合には失敗したということである。中国や朝鮮といった、根本的な文明も異なり、一人当たりGDP水準も完璧に異なる国と通貨連合を形成することがいかに非現実的かを突きつけてくれたという意味で、日本人の一人として欧州に感謝したい。図らずしも、「アジア統一通貨論」という狂気の議論が、(一時的かもしれないが)日本の論壇から姿を消したからだ。

もう一つは、政治的な主権はたとえ一部であっても他国に渡してはならない、ということだ。今回は、管理通貨制度を採用する主権国家にとって、金融政策という極めて重要な柱を、ECBという組織に渡したことで大混乱が生じている。本体ブログで当職が主張している通り、日本の会計業界は、会計基準についても他国に委任しようとしている訳だが、そうした行為は狂気の沙汰という他ない。

アジア通貨連合国際会計基準という幻想を、日本から完璧に駆除できるように、当職は微力を尽くして行きたい。


引用元: 新宿会計士の出張所 - 楽天ブログ(Blog),
http://plaza.rakuten.co.jp/shinjukuacc