小沢問題

複式簿記で記帳するように法令を改正してもらいたい。政治家だけが複式簿記が出来ない?

政治資金を規定する目的は2つあります。

 収支報告書の提出を義務付け、これを公開することによって政治資金の収支の状況を国民の前に明らかにすること。
 政治活動に関する寄付等について、対象者による制限や量的、質的制限などを行うこと。

 そこで、政治資金規正法は、政治団体の会計責任者に対して、その政治団体に係る1年間のすべての収入と支出、そして12月31日現在の資産等の状況を記載した収支報告書(決算書)の提出を定めたのです。

主な報告事項は次のようになっています。

 寄付金(年間5万円を超える寄付金については寄付者の氏名等)
 政治資金パーティ収入(ひとつのパーティで20万円を超えるものについて、支払者の氏名等)
 政治活動費にかかわる支出(一件当たり1万円以上のものについては、支出を受けた者の氏名等)
 資産や負債(土地、建物、建物の所有のための地上権又は土地の賃借権、100万円超の動産、預貯金《普通預金等を除く》、金銭信託、有価証券、出資による権利、100万円超の貸付金、100万円超の敷金、100万円超の施設の利用権及び100万円超の借入金について、その内容)

 「資金収支報告書」は単式簿記

 昨年の衆議院総選挙間から問題になっているのは、収支にかかわる虚偽記載の有無です。 とくに注目されているのは陸山会の収支報告書です。会計の立場から腑に落ちない点を述べていくことにします。そもそも資金収支報告書は単式簿記です。数字の動きが掴みにくく、複式簿記と比べてチェックが働きにくいのです。

 「時系列」じゃないのが問題

 問題となっている平成16年度の収支報告書の収支の部には、代表からの借入金として4億円の入金が記載されています。そして負債の部には借入金4.9億円、資産の部には定期預金4.7億円が記載されています。複式簿記で表現すれば (借)定期預金/(貸)借入金 となります。

 平成17年度の収支報告書を見ると、土地が3.4億円、支出欄に事務所費4億円と記載されています。これは前年度に借り入れた資金を使って土地を購入したことを表しています。現金の収支に基づいて記帳するのが会計の常識ですから、この流れは特に問題はない、と思われていました。ところが、そうではなかったのです。

 実は土地の購入は平成16年10月29日の午前に行われていました。そして、銀行借り入れはその日の午後に実行されたものでした。あきらかにおカネの流れが逆です。不可解な点はこれだけではありません。なぜ、平成16年10月29日に購入した土地を、平成17年に購入したものとして処理したのか。会計の常識からすれば、現金の動きの事実を時系列的に記帳して、平成16年度の収支報告書に反映すべきでした。マスコミはこの点を「不実記載」と批判しているのです。

 複式簿記ならすぐ見える「簿外資金」

 もうひとつは簿外資金の存在です。これこそは単式簿記では見逃してしまう点です。報道によりますと、借入金は4億円の定期預金を担保にして借りたものです。しかしながら、これを複式簿記で考えれば、借入をすれば同時に預金も増えます。つまり、平成16年の預金は4.7億円ではなく、借り入れた資金4億円を加えた8.7億円でなくてはなりません。だからこそ、翌年に3.4億円の土地を買い、2年かけて4億円の借金を返済できたのです。もし、預金が4.7億円ならば、どうやって借入金を返せたのでしょうか。

 会計数字は重い!


 以前、会計の知識がない人がめちゃくちゃな決算書と税務申告書を作成して税務署に提出した結果、散々な目にあい、最後には重加算税を課せられたとの話を聞いたことがあります。民間の世界では、知らないでは済まないということです。コメンテーターの中には、「記帳ミスなら訂正すればいいんじゃないか」と簡単に考えている人たちがいますが、会計を知らなさすぎる、というほかありません。会計数字はそれだけ重いのです。

では、故意だとしたら・・・。

ここからは、きな臭い話しになりそうですね。
閑話休題。次回からは本題に戻ることにしましょう。

(2010.1.25)

引用元: 第5回 【雑談】会計としての政治資金報告書
http://www.ifsworld.com/ja-jp/News/JP%20Column/05%20Government%20Report%20on%20political%20funds