「所得格差が成長阻害」スティグリッツ教授

スティグリッツ教授との一問一答は以下の通り。

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 −−ある程度の格差があった方が人は努力する

 「完全に平等だったら努力する動機を失う。だが、米国社会は、成長が最大化する最適の水準からかけ離れた格差が生まれている。これではアメリカンドリームが失われてしまう。金持ちの上位1%が所得の20%を占めるなど、社会として許容できない水準になった。データを見ると、先進国で米国が最も格差の高い、機会の平等がない国になっている」

 −−身分が固定化する階級社会になったのか

 「米国では、両親の所得と子供の所得の相関関係が高い。金持ちの子は金持ち、貧乏人の子供は貧乏のままだ」

 −−昨年はウォール街占拠運動が全米に広がった

 「金融危機では、混乱の張本人であるウォール街の銀行家が訴追されないまま、膨大な退職金を持って逃げてしまった。直近もロンドン銀行間取引金利(LIBOR)の不正操作が問題になっているが、『申し訳ないから、その利益を返す』とは誰も言わない」

 −−大きな富の格差はなぜ生まれたのか

 「経済政策が政治化しているからだ。政治が市場の制度を決め、一部が得して一部が損する仕組みになった。社会的な地位の格差、不平等な教育制度、法的抜け穴、不平等な税制などを直せば、社会の成長は可能になる」

 −−日本の格差問題は、富める高齢者と貧しい若年層の世代間対立だ

 「これも政治現象。投票する年配者寄りの制度に、政府が投資する。米国では多くの若者が親元に戻る現象が起きている。ここは社会の結束が必要だ」

 −−過度に平等主義を持ち込むと、フリーライダー(ただ乗り)が増える

 「不公正な支出を防ぐため、汚職対策にお金を使うべきだ。失業手当を受ける場合は、職業訓練の授業を受講させ、仕事探しをするようにさせる」

 −−日本経済がさえない

 「円安政策で輸出競争力をつければいい。ドル買い・円売り介入で市場に流れた円をそのまま流通させておく『非不胎化政策』も有効だ」

 −−一方で、東日本大震災後の日本は貿易赤字が続いている

 「外貨準備高が積み上がった日本は心配する必要がない。日本はインフレを懸念しすぎだ。ある程度の物価上昇が必要だろう」


「所得格差が成長阻害」 ノーベル経済学賞・米コロンビア大のスティグリッツ教授 - MSN産経ニュース