中性子線が

ソフトエラーとは一過性の不良でなおかつ、ハードウェア(半導体や電子部品など)が壊れるのではない不良を指す。ロジックやメモリなどのハードウェアそのものには異常はない。異常が発生するのは、その動作状態である。保存していた論理値が反転したり、読み出し不可能になったりする。ロジックの誤動作やメモリのデータ不良などが発生しても、リセットをかけたり、データを書き込み直したりすると、ロジックやメモリは何事もなかったかのように正常に動作する。

 ソフトエラーを発生させる原因は、いくつかある。半導体チップで最初にソフトエラーが広く知られるようになったのは、1978年のIRPSで報告されたDRAMのソフトエラーである。DRAMパッケージのプラスチック樹脂内に放射線同位元素がごく微量に存在し、アルファ線(ヘリウム原子核)を放出していた。このアルファ線電荷DRAMシリコン・ダイに突入して保存しておいたデータ(蓄積電荷)を破壊することが分かった。樹脂材料の改良とDRAMでの対策によって、現在ではこの問題は解決済みである。

 最近になって問題視されるようになったのは、宇宙線に起因するソフトエラーである。宇宙線(90%は陽子)が大気中の窒素原子や酸素原子などと衝突して高エネルギーの中性子線を放出する。中性子は小さいので人体を含めたほとんどすべての物質を突き抜けるのだが、まれにほかの原子核と衝突することがある。中性子線と衝突した原子核は二次粒子線と呼ばれる複数の粒子を放出する。ほとんどの二次粒子線はイオン線で電荷を持っており、シリコン・ダイの中を通過すると、ロジック回路やメモリ回路などが保持している電荷や電位などを変動させたり、反転させたりする。

 中性子線の放射量(単位時間当たり)は高度に依存しており、航空高度では高く、海面高度では低く、海面下あるいは地下ではさらに低くなる。このため航空宇宙用電子機器では中性子線ソフトエラーを考慮した設計は当然のこととなっている。これに対して海面高度に近い地上で使う電子機器では、中性子線ソフトエラーを考慮することはあまりなかった。

 しかし半導体製造技術の進歩によって加工寸法が短くなり、一方でシリコン・ダイ当たりのトランジスタ数や記憶ビット数が著しく増大することで、地上で使用する電子機器でも中性子線ソフトエラーを考慮する必要が出てきた。特に、誤動作の与える影響が重大な機器では、ソフトエラー対策を含めた誤動作対策が必須になりつつある


引用元: 【PC Watch】 【IRPS 2011レポート】中性子線がボードのCPUやメモリなどを誤動作させる仕組み,
http://pc.watch.impress.co.jp/docs/news/event/20110505_443999.html?ref=rss